デジタルイラストを販売するなら知っておきたいタブレット&作業環境

デジタルイラスト

近年、無料で使えるお絵描きアプリや画像編集アプリが増えたことで、だれでも手軽にデジタルイラストを描けるようになりました。絵が得意な方のなかには、副業として自作のイラストの販売を始めたいという方もいることでしょう。

この記事ではデジタルイラスト作成のための作業環境や、具体的な販売方法などについて紹介します。

デジタルイラストレーターとして望ましい作業環境について

デジタルイラストを作成するのなら、まずは環境から整えましょう。長時間座っていても腰が痛くならない椅子やちょうど良い高さの机、目が疲労しにくい明るさの照明を仕事部屋に用意するとよいでしょう。

コタツやリビングテーブルで作業することも可能ですが、姿勢が悪くなると作業効率が低下したり、健康に影響したりするかもしれません。

実際、プロの漫画家やイラストレーターが、目や肩、腰の不調を訴える様子は、SNSなどでよく見かけるでしょう。長時間の作業に適した環境が求められます。

またデジタル機器に関しては、下記の組み合わせが一般的です。

  1. パソコン+ペンタブレット(液晶タブレットか板タブレット)+スタイラスペン
  2. パソコン(タッチパネル対応)+スタイラスペン
  3. タブレット+スタイラスペン

パソコン+ペンタブレット+スタイラスペン

最低限として、メモリ8GB、容量256GB程度の性能のパソコンを用意しましょう。イラスト作成には一定の画像処理能力が必要なので、メモリ容量4GB程度の事務用パソコンだとスペック不足になる可能性があります。

ノートパソコンでもデスクトップパソコンでも構いませんが、デスクトップの場合はモニターも必要となります。どちらを選んでも、パソコンを母艦として絵を描くためにペンタブレットを外付けして使います。

ペンタブレットには板タブと液タブと呼ばれる2種類があります。板タブとは板状のタブレットのことで、タブレット上にペンを滑らせて描き、そのイラストはモニターに表示されます。

液タブとは液晶タブレットのことで、液晶画面に直接スタイラスペンを滑らせるタイプのものです。どちらを選んでも構いませんが、ペン先に視線を向けて描くのなら液晶タブレットがおすすめです。

パソコン(タッチパネル対応)+スタイラスペン

デスクトップパソコンやノートパソコンではなくタッチパネル対応のタブレットパソコンを使う方法もあります。MicrosoftのSurfaceシリーズなどは、ノートパソコンとタブレットの2モードで使えるので汎用性が高く、ペンタブレットを外付けする必要がありません。専用のSurface ペンを使えばSurface本体が液タブになるので、そのままイラスト作成が可能です。

以下は筆者所有のSurfaceとSurfaceペンです。外付けのキーボードを付けていますが、液タブとしても使えます。

タブレットとペン

タブレット+スタイラスペン

3つ目の組み合わせは、タブレットとスタイラスペンです。iPad+Apple PencilのApple純正の組み合わせは、筆圧感知が可能なので繊細なタッチに対応できるのが特徴です。持ち運びやすく、絵を描くのに特化した構成だといえるでしょう。

以下は筆者所有のiPad Pro(12.9インチ)とKINGONEのスタイラスペンです。純正品のApple Pencilではないので感圧タッチ機能は稼働しませんが、充分に使えます。

タブレット

なお、漫画家やイラストレーターのSNSをチェックすれば、どのような画材を使っているかある程度わかることもあります。プロの方でiPadを使って絵を描いているケースは珍しくありません。

『ボッチだった6ヶ月間(とその後)』(KADOKAWA)を刊行したプロ漫画家の都会さんも、『リアルアカウント』などの漫画原作を手掛けるオクショウさんのYouTube動画内でiPadを使用していると発言しており、その活用法などを紹介しています。

デジタルイラストを描くのにおすすめのタブレットとペンシル

デジタルイラスト作成用の機器として高い評価を得ているおすすめブランドといえば、Wacom(ワコム)とAppleです。

ワコムの板タブや液タブは専用のスタイラスペンとセットになっており、パソコンと接続して使います。安いものは6,000円台から手に入るので、初心者のエントリーモデルとしてはかなりリーズナブルだといえます。

One by Wacom small(CTL-472/K0-C)
Wacom Intuos Medium(CTL-6100WL/P0)
Wacom Cintiq 16 スタンド/フィルムセット(SET-DTK1660K0D-Stand-Film)

機種によってはタブレットのサイズが大きかったり、お絵描きソフトが同梱されていたりするのでチェックしてみましょう。

iPad ProとApple Pencilやスタイラスペンを組み合わせて購入される場合は、iPadのスペックに注意して選んでください。現行のモデル(2022年現在)であれば、ノーマルのiPad、iPad mini、iPad Air、iPad Proのいずれを選んでも高性能ですが、ストレージ容量や液晶のサイズには大きな違いがあります。イラスト作成以外の用途にも使えるので、充分検討しましょう。

広い画面で描きたいのなら12.9インチのiPad Pro、スタイラスペンについては純正品のApple PencilやApple Pencil第2世代がおすすめですが、サードパーティの製品のなかにも高性能なものがあるので探してみるのもよいでしょう。

Apple 12.9インチiPad Pro
ApplePencil(第2世代)

デジタルイラストの販売方法

デジタルイラストを販売するには大きく分けて2つの方法があります。依頼を受けて注文通りのイラストを納品する方法と、自由に描いたイラストを販売する方法です。

注文を受けてイラストを作成・販売する方法

どちらの方法も稼ぐことはできますが、まったくのゼロから副業として取り組むのであれば、まずは依頼を受けてイラストを作成・納品する方法を選んだほうが良いでしょう。

ウェブサイトに掲載するバナーやSNSのヘッダー画像の作成などは需要を見つけやすいので、初期の仕事として適切だと思われます。

最初の仕事の受注にはクラウドソーシングサービスがおすすめです。手数料を支払う必要はありますが、仕事が見つけやすく、支払いシステムがしっかりしているので、請求書の作成や入金の催促といった作業がほぼ不要です。

無料でアカウントを作成できるサービスがほとんどなので、まずは登録して、どんな仕事があるかチェックしてみましょう。

ランサーズ
クラウドワークス

自由に描いたイラストを販売する方法

自由に自作イラストを売る場合、SNSなどで知名度がなければ難しいといわざるをえません。無名の画家と同じように、作品を発表しはじめたばかりのイラストレーターはなかなか認知されにくいからです。

TwitterやInstagramに自作イラストを投稿して、フォロワーを増やす宣伝活動を行うと同時に、SKIMA(スキマ)やココナラといった受発注サービスサイトに登録しましょう。

クラウドワークスやランサーズと違って、こちらは依頼が集まっているのではなく、自分のがどういったイラストを描きたいのか、描けるのか、スキルを販売したい登録者が集まっているのが特徴です。サイトによって利用者の属性が異なります。

まずはチェックしてみてください。

SKIMA
BOOTH(ブース)
ココナラ

デジタルイラストを販売する際の注意点

デジタルイラストを販売する際、特に注意すべきは著作権と肖像権の扱いです。

著作権とは「知的な創作活動によって何かを創り出した人に対して付与される知的財産権(知的所有権)」の一種で、肖像権とは自己の容姿を無断で撮影されたり、撮影された写真を勝手に公表されたりしないよう主張できる権利や著名人の肖像や氏名のもつ顧客吸引力から生じる経済的な利益・価値を排他的に支配する権利のことです。

参考:
著作権って何?(はじめての著作権講座 )|公益社団法人著作権情報センター
肖像権とは|一般社団法人日本音楽事業者協会

有名キャラクターのイラストを作成したり、芸能人の写真をデジタル加工して販売するのは公序良俗に反するうえ、著作権や肖像権の侵害となるので絶対に避けましょう。たとえクライアントの要望があっても、法律違反になるような仕事は受けるべきではありません。

また自分の作品の著作権についても、クライアントに渡るのか自身で所有するのか事前に確認しておきましょう。著作権は、たとえ依頼を受けて作成したとしても譲渡できない「著作者人格権」と譲渡可能な「財産的な利益を保護する著作権(財産権)」の2つに分けられます。

参考:
著作者にはどんな権利がある?公益社団法人著作権情報センター

自分の作品を公表するかどうか決められる「公表権」や作品の内容を勝手に第三者に変更されない「同一性保持権」を含む著作者人格権は譲渡できませんが、「二次的著作物の利用権」や「公衆送信権・公の伝達権」「複製権」「上映権」といった財産権としての著作権は譲渡可能です。

ただし「二次的著作物の利用権」や「複製権」などを譲渡してしまうと、自分が生み出したキャラクターを自分で使えなくなる等、将来において権利問題が起きる可能性があります。

1回限りのバナー作成や売り場向けのポップ作成といった仕事であれば、そこまで気にする必要はないかもしれませんが、バーチャルユーチューバーのデザイン作成業務など、成果物が長期に利用される場合は、著作権の契約内容をはっきりさせておいた方が良い案件もあります。

不明確な点があれば必ず明らかにしてから仕事に取り掛かりましょう。

まとめ

インターネットの発達により、自宅にいながら自作のイラストを販売できるようになりました。まずは販売サイトに登録して、どのようなマーケットなのか自分の目で確認し、自分が活躍するジャンルを見極めると効率的です。

イラスト作成が得意な方はぜひ挑戦してみてください。自分のイラストに金銭的価値が付く経験をすると、プロ意識が高まり、技術も上達することでしょう。