インターネットの普及とともに、個人がさまざまな形で情報を発信できるようになり、「副業での稼ぎ方」も多様化しています。
とくに近年のYouTuber全盛時代においては、「好きなことで稼ぐ」というスタイルが憧れの対象になり、動画投稿をはじめる人も増加しています。しかし、投稿者の増加にともない「他との差別化」も難しくなり、日を追うごとに収益化のハードルは高まっていると考えられるでしょう。
一方で、実況型の映像配信を行う「ライバー」業界は、パイオニアとして活躍するトップライバー達の登場から日が浅く、これからの成長・拡大が見込めるフィールドだといえます。まだまだニーズが開拓されていない分野も多いため、配信初心者が参入する余地も大いに残されている状況です。配信内容を工夫し、ファンを獲得することで、「趣味を生かして収入を得る」ことも十分期待できるでしょう。
現在、多くのライブ配信サービスは普及段階にあるために、配信者に対する報酬体系も見通しにくくなっています。そのため、「ライブ配信って稼げるの?」「そもそもどうやって収入を得ているの?」といった疑問もあるでしょう。この記事では、ライブ配信における収益化の仕組みや、稼ぎ方、配信のコツについて解説していきます。
目次
ライバーとして収入を得る方法
ライバーのなかには、副業として月十万円以上をコンスタントに稼いだり、トップライバーとして月に数百万円を稼いだりしているケースも見られます。しかし、ライブ配信を見ていても「一体何が収入につながっているのか」が把握できないこともあるでしょう。
ライブ配信の収益化システムはプラットフォームによって異なりますが、大きく「視聴者からの直接支援」と、「配信時間に応じた報酬」という2つに区分できます。その他、ライバー専門の事務所に所属することで、独自の報酬体系にもとづいた収入を得ることも1つの方法です。
以下ではより詳しく、ライバーが収入を得るにはどんな方法があるのかを解説していきます。
「投げ銭」システムの利用
現在、個人で活動するライバーにとって、主たる収入源となっているのが「視聴者による直接支援」です。
Pococha(ポコチャ)や17LIVE(イチナナライブ)など、多くのライブ配信サービスでは、「投げ銭」と呼ばれる収益獲得システムが用意されています。投げ銭とは、配信中に視聴者から送られる「ギフト」や「アイテム」のことで、配信者はその獲得量に応じて、プラットフォームの事業者から報酬を受け取ることができる仕組みです。
投げ銭は多くの場合、送る側の金銭的負担を必要とします。そのため、投げ銭を得るには「お金を払ってでも応援したい」と思ってくれるファンを獲得するプロセスが必要になるでしょう。
「ファン獲得」というとハードルが高く感じられますが、重要なのは「居心地のよい場」「楽しめる場」を提供することであり、専門的なスキルが必要になるとは限りません。ライブ配信の特徴である「双方向性」を生かし、視聴者とのコミュニケーションを深めていくことが、固定ファンを獲得するうえで求められます。
時給型サービスの利用
多くのライブ配信サービスは、ライバーにとって稼ぎやすい環境を整えるため、新しい報酬システムを随時導入しています。そのうちの1つが「時給制」と呼ばれる、配信時間に応じた報酬がプラットフォーム事業者から支払われる仕組みです。
ただし、「時給制」とはいっても、アルバイトのように「配信時間がそのまま報酬に転換される」というわけではありません。視聴者数やコメント数、投げ銭の量といった要素も計上しながら、「盛り上がりの度合いと配信時間の長さ」を総合的に報酬へと反映する仕組みが取られているのです。
そのため、視聴者の数やリアクションが少ない配信を長く続けても、報酬にはつながりません。一見シビアにも思えますが、直接的な「投げ銭」に依存する場合よりも、配信内容や集客の戦略に柔軟性を持たせられるメリットがあります。
なぜなら、時給型の報酬システムは、視聴者側が金銭的負担を負わなくとも、「視聴者数」や「コメント数」といった多面的な要素が報酬につながるからです。そのため集客の戦略としては、「固定ファンから支援してもらう」という方向に限定することなく、「多くの人に長く見てもらう」という方向でも考えていくことができるでしょう。
このように、「投げ銭」においては「固定ファンの獲得」が、「時給型」においては「不特定多数への訴求」が、収益化のためのポイントになります。
ライバー事務所への所属
ライブ配信によって収益をあげるうえでは、個人のライバーとして活動する以外に、「ライバー事務所」に所属する方法もあります。
ライバー事務所は、一種の芸能事務所です。事務所によってサポート内容はさまざまですが、個々のライバーに対するマネジメントや、企業案件の紹介などを行う点は共通しています。
一般的に、所属にあたっては登録料や仲介手数料などが必要になりますが、初心者に対するフォローも充実しており、ライバーとして本格的に稼ぎたい場合には有力な選択肢となるでしょう。
ライバーが事務所に入るメリット
ライバーとして収入を得るうえで、個人での活動が向いている人もいれば、事務所に所属する方が適している人もいます。
自分が他のライバーと差別化できるポイントや強みを自覚しており、それを生かす方法も把握できているのであれば、個人でも収益をあげられる可能性はあるでしょう。しかし、そうした方向性に見当がつかなかったり、なかなか成果につながらないことに不安を覚えたりする場合には、ライバー事務所への所属も考慮してみるとよいかもしれません。
以下では具体的に、ライバー事務所に所属するメリットを提示していきます。
広告・配信企画のマネジメント
ライバー事務所に所属するメリットは、まず「客観的な視点からのマネジメント」が提供される点にあります。ライバーとしての方向性や、売り出し方に対して、明確な指針を示してもらえる意義は大きいでしょう。
個人で活動する場合には、配信を続けるなかで「自分に合った方法」を見つけていく必要があり、成果が出るまでに時間がかかるケースも多いです。一方、事務所であればプロの目線から「何をどうアピールしていくか」というアドバイスが適宜与えられるため、進むべき道も見通しやすくなるでしょう。
さらに、認知拡大にあたっても、事務所の力は強い味方となります。事務所のマーケティング戦略にもとづき、ライバーとしての自分を打ち出していくことで、キャラクターが明確になり、ターゲットに適したアプローチが取りやすくなるでしょう。事務所によっては、イベントやコラボ企画など、アピールの場がさまざまに用意されていることも強みです。
加えて、多くの事務所は「データ解析」のノウハウにも蓄積があります。配信を続けていくなかで、「狙ったユーザーに届いているか」「配信のどこで離脱が生じているか」など、的確なフィードバックが得られやすく、方向性や内容のブラッシュアップにつなげられるでしょう。
環境面のサポート
カメラやマイク、照明など、クオリティの高い映像を配信するには相応の機材が必要となります。事務所のなかには、そのような環境を整えるための経費をサポートしてくれるものもあります。
とくに初心者の場合には、「機材をどう使えばいいか」はもちろん、「どうカメラに写ればいいか」「どういう話し方をすればいいか」といった形式面を整えるのに時間がかかるケースも多いでしょう。配信内容だけではなく、環境面の細々としたポイントにもサポートやアドバイスをしてもらえる点が、事務所に所属するメリットの1つです。
企業案件へのつながりやすさ
一般的に、ライバー事務所はさまざまな企業とのコネクションを持っています。そのため個人ライバーに比べ、商品PRをはじめとする「企業案件」に起用される可能性も高まるでしょう。
ライバーとして企業案件を受ける主なメリットは、やはり報酬面にあります。ライブ配信そのものによって発生する報酬に加え、企業との契約料にもとづく報酬が生じるため、一度にまとまった金額を得やすくなります。
企業案件を扱う際には、「もともとの配信からイメージが変わってしまう」といったリスクもあるため、敬遠するライバーも一定数いるのが実情です。一方で、事務所側の視点からいえば、企業案件は明確な「実績」として残ります。一般的に、「商品PRで結果を出したライバー」は、その他の案件でもプッシュしやすくなりますので、継続して依頼を受けられるようになる可能性も高まるでしょう。
また、知名度のある企業や、固定ファンを抱える企業からの案件である場合にはとくに、自身の認知拡大・ファン獲得にもつながると考えられます。
もちろん、企業からの指名により抜擢されるのは一部のトップライバーであることが多く、必ずしも「事務所に入れば企業案件につながる」わけではありません。しかし、企業が商品をPRするにあたり、「視聴者との距離が近いライバー」を起用しようと考えるケースも多く、求められるライバー像はさまざまです。企業が「その商品に関連するジャンルで活動しているライバーを複数起用したい」といったケースも考えられ、事務所に所属していることにより、そうしたチャンスに触れることも多くなるでしょう。
「インフルエンサーマーケティング」という言葉が定着しているように、現在の広報戦略においては「特定分野のコアなファンを抱えている人物」を起用することで、ターゲットを絞って訴求していく方法が広く取り入れられています。商品のPRにライバーを起用するケースは今後も増加していくと考えられますので、そのような企業案件に関心がある場合には、事務所に所属する意義も大きくなるでしょう。
ライバーとしての稼ぎ方のコツ
自身のキャラクターや配信内容により、人気を集めるのに適した方法はさまざまです。しかし、コンスタントに収益をあげるうえで「必須のポイント」も存在します。
ここでは、ライブ配信の際に必ず実践したい「稼ぐためのコツ」について説明していきます。
継続して配信を行う
配信内容が優れていても、配信の頻度が少なかったり、配信がしばらく途絶えたりしてしまえば、固定のファンは獲得しにくくなります。不定期な配信のほかに、必ず配信する曜日や時間を決めるなど、視聴者が「この時間ならこのライブを見られる」と思える環境を作ることが、固定ファン獲得には欠かせません。
はじめたばかりの頃は視聴者がつきにくいため、「自分には向いていない」と消極的になってしまうライバーも少なくありませんが、視聴者数を気にせず配信を続けることが大切です。
そもそも、多くの収入を得ている人気ライバーであっても、ライブ配信の視聴層全体から見れば、固定ファンは一握りに過ぎません。はじめから「見る人全員に気に入ってもらう」ことを目的とするのではなく、「視聴者層のなかで数%の需要を掴む」ことを念頭に置いて配信を続けていくとよいでしょう。
継続することで、「自分の配信を気に入ってくれるユーザー」に見つけてもらうチャンスも増えていきます。小さなニーズを確実に掴み続けることが、ライバーとして安定した収入を得るための条件になるでしょう。
SNSで近いジャンルのアカウントをフォロー
ライブ配信サービス内の活動だけでは、「自分が配信している事実」を知ってもらうのに時間がかかり、集客に苦労するケースも多いです。適宜その他の媒体を活用しながら、ライバーとしての自身の活動を広く周知していくようにしましょう。
とくにSNSは、「特定のジャンル」におけるつながりが作りやすいため、積極的に利用していきたいところです。自身と近いジャンルの人気ライバーや、そのファンのアカウントをフォローし、交流の機会を持つことで、自身が発する情報も拡散されやすくなります。自分の配信内容に近い界隈でアピールすることができれば、おのずと関心も持ってもらいやすくなるでしょう。
配信環境を整える
簡易的なライブ配信であれば、スマートフォンだけでも可能であり、専用の機材を揃える必要はありません。しかし、ライブの画面が見えにくかったり、音が聞き取りにくかったりすれば、視聴者の離脱に直結するケースも考えられます。
とくに継続的に視聴してもらうためには、基本的な画質・音質はもちろん、「照明の当たり方は適切か」「ノイズを拾っていないか」といった部分にも配慮し、見る側のストレスをなくしていく必要があるでしょう。
配信をはじめた当初は「形から入る」ことに抵抗を覚えるかもしれませんが、視聴者側の見やすさを配慮する意識は収益化を図るうえで欠かせません。機材を整えたり、自身の映り方や話し方を工夫したりすることで、「違和感なく視聴できる配信」を心がけましょう。
双方向性を意識する
ライブ配信の特徴は、視聴者からの反応をリアルタイムに確認できる点にあります。配信者が視聴者の声に応える双方向性は、ライブならではの魅力であるため、積極的に活用していきたいところです。
視聴者側にとっては、「自分のコメントにリアクションをくれた」という体験は強く印象に残るため、配信者への関心が高まるきっかけにもなります。
とくに配信をはじめて間もない頃は、わずかな視聴者しか獲得できないこともありますので、個々のコメントに対して積極的にリアクションを取っていくとよいでしょう。配信内容よりも、「配信者とのコミュニケーション」に期待する視聴者も多く、方向性の定まらない「雑談」メインでも配信が成り立つケースは少なくありません。
ただしもちろん、より多くのファンを獲得するには、配信内容の工夫が欠かせません。「この配信を見ればリアクションがもらえる」という期待から、「この配信を見れば○○な満足が得られる」「○○な情報が得られる」というコンテンツに対する期待へと転換できるかどうかが、ライバーとして人気を得るためのポイントになるでしょう。
まとめ
これまで、YouTubeをはじめとする通常の動画コンテンツにおいては、「役に立つ情報」あるいは「見るだけで楽しめる映像」が再生回数を稼ぐ傾向にありました。つまり従来は、特定分野の専門知識や、コンスタントに興味を引ける企画力が求められてきたといえます。
一方のライブ配信においては、視聴者との「双方向的なやり取り」が期待されている面が多分にあります。そのためライバーとしての人気を獲得するうえでは、特別なスキルやノウハウ以上に、「その場に居合わせることを楽しめる雰囲気」を作ることが重要になるでしょう。
このようなライブ配信の特性は、これからライバーとして収入を得たいと考えている方にとって心強いポイントになると考えられます。これまで動画投稿の経験がなくても、継続と工夫を通じて盛り上がれる空間を提供できれば、収益化につなげられる可能性は大いにあるのです。
固定ファンを獲得するうえでは、決まった日時に配信を行ったり、SNS上で配信情報を発信したりと、「期待を集め、それに応える」というプロ意識が必要になります。もちろん「素のまま」のキャラクターが武器になることもありますが、その場合にも「視聴者に楽しんでもらおう」というサービス精神は欠かせません。
「自分の何を打ち出せば人に楽しんでもらえるか」という自己分析と、「それをどう打ち出していくか」という方法の検証が成功の鍵を握ります。方針がなかなか定まらない場合には、ライバー事務所への所属も選択肢になるでしょう。